紹介・案内

センターを設立する目的と事業内容の概要 pdf

戦後、日本における朝鮮研究は、政治的諸問題の影響もあって十分に展開してきたとは言えない。一橋大学について見ても、戦前の福田徳三(1874-1930)、韓国経済史研究の先駆者である白南雲(1894-1979)をはじめ、多くのすぐれた朝鮮学の研究者を輩出したにもかかわらず、学内に朝鮮学を束ねる研究の中心がいままで存在しなかった。このような状況を正確に見据えながら、言語社会研究科韓国学研究センターは歴史的蓄積を批判的に継承し、社会と時代の要請に対応するための斬新な韓国学の確立をめざすものである。
このような問題意識の上で、本センターは「歴史的な和解の可能性を模索する韓国学――体験・記憶・共生のスペクトラム」という主題を設定し、人文・社会学を軸にした韓国学研究を推進する。具体的には、韓国社会とアジア共同体のつながりを学際的(interdisciplinary)に究明し、新しい韓国学研究の方向性を模索し、「体験⋅記憶⋅共生」というキーワードを通じて、アジア共同体の未来像を展望する。特に、歴史的にさまざまな層位が絡んでいる日本と韓国の関係網とその中の分節点に注目して、両国の相互認識の形成過程を歴史的に再び光を照射することで、未来志向的なアジア共同体の知的基盤を構築する。
さらに、本研究センターはアメリカなど他地域で行われる韓国学とは一線を画して、一橋大学独自の学問伝統と人的資源を結集することで、日本最高の韓国学研究・教育拠点、地域社会と連携する中心的機関としての地位の確立を目指す。センターは、韓国学の研究と教育を柱に据えた、東京の西部圏の地域ネットワークの中心と中核的史料センターとしての機能の確立も目標とする。

本センター設立計画に至った経緯

人文学の使命は、学際的な視点から、歴史、文化・芸術・思想などの人文的な現象と社会との関係を明らかにすることにある。この使命を「韓国学」の領域において達成するためには、日本や韓国という地域性(local)と国家を超えた国際的な連関という世界性(global)を組み合わせたグローカル(Glocal)レベルでの、人文学とリージョナルなアジア共同体の歴史性を重視する必要がある。アジア共同体の実現のためには、政治・経済・外交などの分野における努力のみならず、その底辺に貫通する価値観と世界観に対する相互理解も必要である。すなわち、人文的側面から従来のアジア共同体の言説の成果と可能性を再照射することにより、いわば国家単位としてのアジアだけではなく、国境を越えた現象や社会の中の歴史的な背景と多様性(例えば、韓国人ディアスポラ)を重視した研究、およびその成果と蓄積を背景とする教育活動を展開することが必要であるとの問題意識に発して、イ・ヨンスク教授が2016年に、Academy of Korean Studies(AKS、韓国学中央研究院)の海外における韓国学発展支援事業に、Korean Studies in Search of Possibilities for Historical Reconciliation : The Glocal Spectra of Experience, Memories, and Co-existenceをテーマとする研究助成を申請し、これが採択された。センターの設立は、直接的には、この研究受託に係る外部資金の獲得を契機とするものである。

年度毎の事業計画及び将来計画

センターが掲げるテーマの未来志向的な性格を活かしながら、一橋大学が日本における韓国学の「新しいリーダー」としての地位を獲得、確立できるように、下図のような基本的なミッションを設定し、基本的推進戦略に基づき、「韓国学の中核的人材の育成」を柱に据えた多様な研究と教育を実施する。以下の計画は、毎年各領域が並行して推進される。

(1)韓国学の社会的な疏通の拡大

  • 学内の韓国学に関連する研究スタッフの結集
  • 韓国学の中核人材育成
  • 革新的な教育研究のモデルの創出
  • 東京西部圏における韓国学拠点大学

(2)研究と教育の有機的な結合

  • ポスドク支援(研究奨励費支給、共同研究、学術活動への参加機会提供)
  • 大学院生(修士課程・博士課程在籍学生)に研究奨励費支給
  • 新規授業(学部および大学院)開設と統合教育研究モデルの創出
  • 国際シンポジウムの開催、海外学者の招聘やセミナー開催
  • 論文と著書(訳書)出版
  • 教材の開発

(3)東京西部圏の地域ネットワークの構築

  • 地域の大学とのネットワーク構築
  • 韓国の研究機関との協定締結
  • 市民社会団体との交流
  • 市民講座の開催

(4)韓国学資料センター

  • 韓国学の基礎データ集中収集
  • 情報のDB化
  • 韓国学デジタルライブラリの構築
  • 外国の研究機関とのデータ交換

本センター計画の遂行する研究の学術的な特色及び予想される結果と意義

韓国学研究センターの研究と教育で予定される事業一覧

研  究 教  育
・教育研究能力の画期的な強化 ・韓国学専門教育プログラムの開発
・韓国学に関連する学際システムの構築 ・韓国学教育と研究のグローバル化
・韓国学コミュニティの構築 ・韓国学研究力量の強化
・国際学術大会の開催 ・韓国学教育研究インフラの拡充
・韓国学国際研究ネットワークの構築 ・学際的な教育研究の多角化
・韓国学フォーラムの常設運営 ・国内外の専門家の連携講座
・東アジア学連携専攻の拡大 ・市民対象の韓国学プログラムの開発

研究分野で推進するテーマは、近代日韓両国の歴史的な「体験」、日韓の歴史をめぐる「記憶」の政治学、そして「共生」のための可能性模索という三つの領域からなる。本センターでは、従来の研究成果を批判的に継承しつつ、日韓両国が解決していくべき懸案を冷静に直視しながら、歴史的な和解と共生の可能性を模索するための学際的な(interdisciplinary)共同研究を推進する。これらの三つのテーマの研究は、日韓の過去と現在を集中的に照射しながら、未来を眺望する形で展開されることとなる。また、人文科学、社会科学、法学などを統合し、個別の研究領域を超えて学際的、脱地域的、比較的なアプローチを指向することにより、韓国学を東アジア学の中心学問のひとつとし、その地位の向上に寄与したい。上記の包括的なテーマの他に、毎年より具体的な研究テーマを設定し、センターのすべてのスタッフが研究、教育、資料収集、国際交流協力を推進、成果を収めることで、研究の発展可能性と幅広さを示す。2016-2017年計画第一年度の具体的な研究テーマは、「体験」領域では「現代社会の戦争像と記録」、「記憶」領域では「戦後の日本社会の植民地の記憶と植民地責任論」、「共生」領域では「日韓両国の歴史的な和解の可能性模索」などである。研究の成果は、論文と著書、訳書、国際学術会議論文資料集、韓国学文献資料目録などの形式で公刊される。これらの研究成果は、韓国学関連講義の教材としても活用され、さらに一般的に広く公開配布して韓国学研究の拡大に寄与する。国際交流協力プロジェクトは、韓国と日本の韓国学研究諸機関と団体との実際的な交流協力の実現、推進に重点を置く。特に韓国の図書館資料や施設の利点を十分に活用するために、韓国との継続的なパートナーシップを構築し、また研究者を随時招聘、特別講演、ワークショップの開催、大学院セミナー参加などを通じて、国際交流協力を実質化する。

教育分野では、従来の関連講座をより発展させる方向で推進する計画である。現在の韓国学関連講義をより多様化し、毎年二つ以上の新しい講義を開設する。2016-2017年計画第一年度にあっては、研究科既存の授業科目に講師を充当する予定である。韓国学関連講義を多様化、高度化することで、韓国学研究を志す大学院生の増加が期待される。このことを通じて日本における韓国学の基盤をさらに拡充したい。また、教育分野のプロジェクトでは、韓国から招聘する研究者が参加する形での大学院セミナー講座を毎年開設して、韓国学専攻の院生に学際的な議論に参加する機会を提供する。なお、センターでは、地域社会における韓国学への関心を拡大するために、地域市民も参加できる韓国学の講演シリーズ、公演、展覧会なども不定期に開催する計画である。